リスクを見据えた移行計画設計

#リスク設計 #移行計画 #段階導入 #ロールバック

リスクは「最後に対応するもの」ではなく、最初から設計に織り込む前提です。
DreamOnは、計画初期から移行完了までの全期間を通じて、止まらない切替を実現する仕組みをつくります。

※関連:プロジェクト管理の仕組み化と横断統制関係者調整と意思決定の高速化

1. リスクは“全期間”のテーマ、移行は“集約点”

トラブルの多くは切替日に顕在化しますが、原因は初期の設計や意思決定に埋まっています。
だからこそ、リスクは計画初期から登録・評価し、実行中に更新し、終盤の移行で“設計どおりに安全に発動”させる――この流れが重要です。1,2

リスクを見据えた全期間設計の流れ 計画・設計 リスク登録/対応方針策定 開発・検証 リスク更新/検証結果反映 移行・切替 段階移行/バックアウト判断 運用・改善 レビュー/知見の再利用
プロジェクト全期間を通じて、リスクを前提に設計・更新・発動・再利用する流れ。

2. 止めないための原則(3つ)

  1. 段階移行: Big bangを避け、機能・データ・ユーザーを段階的に切替える。
  2. 並行稼働: 一定期間は旧新を併用し、業務影響を緩衝する。
  3. 可逆性(ロールバック): 戻す条件・判断者・手順を先に決める。2,3

※ 原則はプロジェクト規模や重要度に応じて軽重を調整します(固定ではなく“方針”)。

3. 全期間をつなぐ設計サイクル(計画→検証→移行→学び)

3.1 計画初期:リスクを“前提”として設計する

  • リスク登録票を作る(対象:システム/データ/業務/権限/外部連携/人・体制)。
  • 確率×影響で優先度を付け、暫定の対応方針(回避/低減/受容/移転)を記す。2
  • 移行方針(段階移行・並行期間・暫定運用)を“構想段階”でたたき台化。

3.2 実行中:リスクを“更新”し、対策の現実性を上げる

  • テストで得た知見をリスク登録票へ反映(確率・影響・対策の更新)。
  • 移行リハーサルの準備(本番同等のデータ量・接続・権限での事前検証)。1
  • 移行Runbookの素案作成(役割、時刻表、連絡網、停止許容、復旧手順)。

3.3 終盤:設計どおり“安全に発動”させる

  • 段階移行マップに沿って切替(機能→データ→ユーザーの順など、事前合意の順序)。
  • ロールバック判定票で可逆性を担保(中止閾値→YES/NO分岐、決裁者を明記)。
  • 並行稼働チェックで照合(照合条件・差異対応・終了条件)。3

3.4 運用:学びを“次回の前提”に戻す

  • 事後レビューで“効いた対策/過剰だった対策”を棚卸し、標準へ反映。
  • 次回以降の移行テンプレ(Runbook/判定票/チェック表)を更新し再利用。
段階移行の考え方 第1段階 テスト移行 第2段階 並行稼働 第3段階 部分切替 第4段階 本番完了 ロールバック経路(可逆性)
全移行を一度に行わず、段階的に切替えながらロールバック経路を確保する。

4. 最少セット(これだけは用意する3枚)

  • 移行Runbook: 当日のタイムライン、役割、連絡網、停止許容、復旧手順。
  • ロールバック判定票: 中止閾値(性能・品質・業務影響)と決裁者、分岐後の手順。
  • 並行稼働チェック表: 照合条件(件数・金額・件別)、差異の対応フロー、終了条件。

規模や重要度に応じて詳細化しますが、「3枚基盤」があるだけで切替はぐっと安定します。

5. DreamOnの役割(伴走支援の範囲)

  • リスク登録票の設計・ワークショップ運営(関係者の視点を統合)。
  • 段階移行マップ/Runbook/判定票/チェック表テンプレの提供と初期整備。
  • 移行リハーサルの設計と当日サポート(判断・記録・改善点の反映)。
  • 事後レビューの設計(学びの標準化と次回の前提化)。

参考文献

  1. 1. IPA(情報処理推進機構)『ITプロジェクトの実態調査』(2020)— 事前検証不足が移行失敗の主要因に。
  2. 2. Project Management Institute (2017) 『PMBOK® Guide – Sixth Edition』— リスク計画・対応を計画段階から統合。
  3. 3. 経済産業省『DX白書2023』(2023)— 大規模移行では段階導入・並行稼働・可逆性の確保を推奨。

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