「スピードが命」と言われる一方で、早く動くほど混乱するプロジェクトがある。
立場をわきまえずに先走れば、関係者を置き去りにし、
慎重になりすぎれば、チャンスを逃す。
動くほど疑われ、止まるほど責められる。
その狭間で、PMはどう判断すべきか。
■ 「前のめり」が混乱を呼ぶ
若手リーダーほど、「とにかく早く動こう」とする。
だが、複雑な組織構造では、スピードが関係性の秩序を壊すことがある。
承認ルートを飛ばす、上位判断を待たずに調整する――
意図は良くても、「勝手にやった」と捉えられれば、信頼は逆に失われる。
スピードは推進力にも、破壊力にもなる。
勢いだけで前進すれば、チームの呼吸が乱れ、やがて足が止まる。
■ 慎重さが生む「見えない停滞」
一方で、動かないリーダーもいる。
「判断を間違えたくない」「反対されたくない」と、確認を重ねすぎてしまう。
その結果、プロジェクトのテンポが失われる。
信頼を守るために慎重になるほど、信頼を失うリスクが高まる。
動かない人は、“安全”ではなく“停滞”を生む。
■ 「速さの基準」を場に合わせて変える
大切なのは、「速さ」の基準を一律にしないこと。
リーダーの特性やプロジェクトの段階によって、
“どのスピードを最適とするか”を設計する。
- 若手中心なら「早く試して、早く学ぶ」
- 対外調整が多い時期は「早く共有して、ゆっくり決める」
- 移行期は「早くリスクを潰して、慎重に進む」
速さの定義は、状況に応じて再設定するもの。
スピードそのものではなく、「スピード感の使い分け」が真の力量だ。
■ PMの仕事は「速度を設計すること」
PMは、自分が動くよりも、チーム全体が動けるリズムを設計する役割だ。
- 早く決める会議/時間をかける議題を分ける
- チャットの即レス文化に“判断のルール”を組み込む
- 承認プロセスを明確にし、先走りを防ぐ
スピードは、結果ではなく構造のデザインだ。
全員が安心して動ける速度をつくるのが、PMのリーダーシップである。
速さは武器ではなく、リズムだ。
チーム全体のテンポを設計できるPMこそ、
スピードの時代を動かす“静かなドライバー”である。