進捗が遅れているときほど、空気を整える

プロジェクトが遅れ始めると、数字より先に空気が重くなる。
焦りや苛立ちが伝染し、会議の発言が減る。
実はこの「空気の乱れ」こそが、遅れを拡大させる最大の要因だと思う。


1. 遅れの原因は「数字」ではなく「空気」

遅れが出たとき、ついグラフや進捗率ばかりを見てしまう。
しかし本質的な遅れの根っこは、メンバーの心理的負荷にある。
「また怒られる」「今さら言っても仕方ない」——そう感じた瞬間、報告は止まり、問題は深く潜る。

PMがまず観察すべきは、数字ではなく表情だ。
誰が話さなくなったか。誰が笑わなくなったか。
空気の変化を“データ”として捉えられる人こそ、リカバリーが上手い。


2. 焦りを共有するより、冷静さを回す

遅れが見えると、PMは焦りを共有しようとする。
「巻き返そう」「全員で頑張ろう」と。
だが、焦りは共有しても成果にはならない。

私はよく「静かな進捗報告会」を開く。
BGMをかけ、声のトーンを下げ、議論より確認を重視する。
誰も責めず、現状を整然と共有するだけで、チームの思考が戻る。

焦りの火に油を注ぐのではなく、風を止める。
その冷静さが、結果的に一番のスピードになる。


3. 雰囲気が変われば、動き出すスピードも変わる

空気は目に見えないが、確実に伝播する。
一人の落ち着きが、会議全体を落ち着かせる。
PMの表情、声の高さ、会話の間——そのすべてがチームの温度を決める。

進捗が遅れているときこそ、PMは空気の調律者であるべきだ。
静けさを取り戻すこと。
それが、立て直しの第一歩になる。